雨足が強まり、窓ガラスを叩く音は、子供たちの楽しげな笑い声をかき消すほどではなかった。放課後等デイサービス「ひまわり」の室内は、ハンカチ落としで熱気に包まれていた。

6人いる利用者たちは、それぞれ個性豊かなハンカチを握りしめ、真剣な眼差しで床に目を凝らしていた。リーダー格の小学5年生、翔太は、仲間たちが隠したハンカチの位置をまるで透視でもするかのように見つけ出し、次々と見つけていく。彼の正確な視線と素早い動きに、他の子供たちは歓声を上げたり、悔しそうに唇を噛んだりしていた。

中でも、いつも静かに過ごしている小学2年生の美咲は、少し変わったハンカチを使っていた。それは、お母さんが手作りしてくれた、小さな猫の顔が刺繍された、ふわふわのハンカチだった。美咲は、そのハンカチを他の子供たちから見つからないように、慎重に隠した。普段は口数が少ない美咲だが、ゲームに夢中になると、小さな顔に真剣さが宿り、普段とは違う輝きを放っていた。

翔太が美咲のハンカチを見つける番になった。彼は、他の子供たちのハンカチを見つける時のような余裕はなく、真剣な眼差しで部屋全体を見渡した。しかし、何度探しても美咲のハンカチは見つからない。翔太は額に汗をにじませ、他の子供たちも息を呑んで見守っていた。

その時、美咲が小さな声で言った。「…ここに…あります…」と。彼女は、自分のハンカチが隠してある場所を、恥ずかしそうに指差した。それは、誰もが思いつかないような、少し変わった場所だった。

翔太は、美咲の隠しかたの創意工夫に感心した。そして、美咲のハンカチを見つけた時の安堵感と、彼女の小さな勇気に心を打たれた。

ゲームが終わると、子供たちは疲れて笑顔で床にへたりこみ、それぞれが持ってきたおやつを分け合って食べた。外は相変わらず風雨の音しかしないが、「ひまわり」の室内は、子供たちの温かい笑顔と、友情の温かさで満たされていた。 その日は、雨風にも負けず、心温まる一日になった。