
放課後等デイサービス「ひみつきち」では、七夕の季節が訪れるたびに子どもたちの笑顔が一段と輝く。静かな教室の片隅に、色とりどりの飾りが飾り付けられ、笹の葉には短冊が風に揺れていた。
今年の七夕制作のテーマは「みんなの願いが叶いますように」。子どもたちは、思い思いの願いを短冊に込めて、一文字一文字に祈りを込めて書いていく。誰かは「みんなともっと仲良くなれますように」、またある子は「大好きなおばあちゃんの健康を願って」。
飾り付けが進む中、自然とお互いを手助けし合う姿が増えていく。色紙を切る子、糊で丁寧に貼り付ける子、短冊を結ぶ子――それぞれが役割を分担し、まるで小さなチームのようだ。
そんな姿を見ていたスタッフの一人は、心の中で静かに祈った。「この場所が、子どもたちの秘密基地(ひみつきち)であり続けますように。ここで過ごす時間が、みんなの絆をより深める時間でありますように。」
そして、夕暮れが教室を包み込むころ、完成した七夕飾りはまるで星空のように輝き始めた。子どもたちの願いが、やさしい風に乗って夜空に届く、その瞬間を誰もが心待ちにしていたのだった。
しかし、その日の帰り際、ひとりの子がそっとつぶやいた。
「ねえ、みんなの願いって、本当に星まで届くのかな?」
その問いかけに、みんなが顔を見合わせた。願いの力とは一体何だろう?そして秘密基地「ひみつきち」の七夕は、ただの行事以上の何かを子どもたちに教えようとしていたのかもしれない。